「コード」に合う「メロディー」の法則

この章では「入門編」の中できちんとご説明できていなかった「コード」に合う「メロディー」の法則について説明していきます。
「コード」に合う「メロディー」はある程度、感覚でわかる部分がありますが「法則」を学ぶことによって、戦略的に「メロディー」と「コード」の関係を操れるようになり作曲スキルをあげることができるはずです。

1.コードの構成音を使う

まずコードの構成音は無条件にコードとマッチする音に聴こえます。
例えば演奏しているコードが「C」であれば、構成音は「ド」「ミ」「ソ」ですから、「ド」と「ミ」と「ソ」は、どのようなメロディーラインでもコードとマッチする音に聴こえるはずです。
例えば、以下のようなメロディーです。

コードとずれている感覚はないと思います。
ただ少し「単純」というか「機械的」というイメージがあると思います。
目指すべき方向性次第ですが、そういったイメージを狙わない場合はコード構成音以外も使っていく方が良いと思います。

2.刺繍音

コード構成音以外を取り入れる場合のもっとも簡単な方法として、コード構成音から2度(※)上昇、もしくは2度下降してまたコード構成音に戻ってくるという方法があります。これを「刺繍音」と言います。
※2度というのはその音階上、次に高い音もしくは次に低い音のことです。
詳細は、入門編の「ダイアトニックコード」を参照してください。
「刺繍音」は、以下のような音です。

刺繍音

「刺繍音」の一つ目の「シ」は「C」の構成音である「ド」から下がってきて、また「ド」に戻ってきています。
二つ目の「ファ」は、「C」の構成音である「ミ」から「ファ」へ上がってまた「ミ」に戻ってきています。
このような音を「刺繍音」と言います。
「刺繍音」を使ったメロディーはこんな音です。

「コード」とマッチしている状態を保ちながら「単純」「機械的」という感覚を解消できていると思います。
コード構成音だけでは「単純」「機械的」と感じる場合は「刺繍音」をとりいれていきましょう。

3.経過音

「刺繍音」のほかに「コード」外の音を使う方法として、コードの構成音から別のコード構成音へ2度ずつ移動していく方法があります。そのようにして使われる音を「経過音」と呼びます。
例えば、以下のような音です。

経過音

「経過音」の1つ目の「レ」は、「C」の構成音の「ミ」から2度ずつ下降しながら、別のコード構成音「ド」に辿りついています。
「経過音」の2つ目の「ラ」は、「C」の構成音の「ソ」から2度ずつ上昇しながら、今度は「Em」の構成音である「シ」にたどり着いています。
このように「経過音」は一つのコード内だけでなく、異なる2つのコードにまたがって使っても問題ありません。
「経過音」を含むメロディーはこんな音です。

コード構成音だけでは「単純」「機械的」と感じる場合は「経過音」もとりいれていきましょう。
なおコード構成音が3度より離れている場合、例えば「C」における「ソ」と「ド」のような音を、2つの「経過音」を使ってつないで「ソ」⇒「ラ」⇒「シ」⇒「ド」としても問題はありません。

経過音の連続

4.先取音

「刺繍音」「経過音」以外にコード外の音を取り入れる方法として、次のコードの音を少し先に使ってしまう方法があります。これを「先取音」と言います。
読むときは「せんしゅおん」と読みます。
例えば以下のような音です。

先取音

この「シ」の音はCの構成音「ド」「ミ」「ソ」ではなく、「Em」の構成音です。
このように次のコードの構成音をほんの少し早く使うことができて、その少し先取りした音のことを「先取音」と読んでいます。
「先取音」を含むメロディーはこんな音です。

先にメロディーが「シ」の音を鳴らしはじめて、間髪入れずに伴奏が「Em」で追いつくことで「コード」から外れているという感覚を無くしています。
この「先取音」少しかっこいいと思いませんか?
「先取音」として選ぶ音と次のコードによる部分もありますが、「先取音」を使う場合は「刺繍音」「経過音」に比べて、かっこいい感じになります。
メロディーにかっこいい感じを与えたい場合は「先取音」を使っていきましょう。

5.倚音

コードの構成音から2度ずらした音から鳴らし始めて、次にコードの構成音に戻ることができます。この2度ずらした音を「倚音」と言います。
読む時は「いおん」と読みます。
例えば、以下のような音です。

倚音

「倚音」の1つ目「レ」は、「C」の構成音「ド」よりも2度高い音で「レ」を発音した後「ド」に移動しています。
「倚音」の2つ目「シ」は、「Am」の構成音「ラ」よりも2度高い音で、「シ」を発音した後「ラ」に移動しています。
このように、コードの構成音から2度ずれた音を先に発音し、その後コード構成音へと移動すると「コード」と馴染むように聞こえます。
「倚音」を含むメロディーはこんな音です。

いかがでしょうか?
少しメロディアスな感じが伝わりますでしょうか?
「倚音」を使った場合は、メロディアスな感じになります。
既製の曲でも、甘いメロディーなんて言われている曲は「倚音」が取り入れられていることがよくあります。

前述のように「倚音」は2度上、2度下に移動することでコード構成音にたどり着く音なのですが、その際、上に移動するのが良いのでしょうか?それとも下へ移動するのが良いのでしょうか?
それはコードにおけるそれぞれの音の高さで決まっています。
音階は一オクターブに7音あります。
「C調」であれば、「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」「ラ」「シ」ですね。
このうち3和音は三つの音を使いますから「倚音」となりうる音は残りの4つの音ということになります。
これらの4つの音を「倚音」として使った場合に、次に進むべき音を「C」を例にとって示すと以下のようになります。

倚音のパターン2度(9度)と4度
倚音のパターン6度と7度

(補足)
上記で「ルート」となっているのは、そのコードの基本となる音で「C」で言えば「C」=ドの音です。
コードの基本音のことを「ルート」もしくは「根音」と呼ぶので覚えておきましょう。

上記のとおり、通常「倚音」は、
2度(※9度)の音ならルートへ
4度の音なら3度へ
6度の音なら5度へ
7度の音ならルートへ

それぞれ進みます。
このルールを守った方が、コードと馴染み違和感のない「倚音」になります。
※この音を9度と表現する場合があります。2度と9度はオクターブ違いで同じ音です。

6.まとめ

コード構成音と馴染む音は、ほとんどのケースでこれまで述べた「刺繍音」「経過音」「先取音」「倚音」のいずれかになっています。
逆に、このいずれでもない音の場合、コードから外れているように聴こえることが多いと思います。

この章のまとめです。

まとめ

【1】コード構成音から2度上昇、または下降してまた同じ音に戻ってくる音を「刺繍音」という。

【2】コード構成音から別のコード構成音へ2度ずつ移動する音を「経過音」という。

【3】コードが切り替わるタイミングで次のコードの構成音を先取りする音を「先取音」という。「先取音」はかっこいいイメージ。

【4】コード構成音から2度ずれた音を先に発音してから、コード構成音に移動する音を「倚音」という。「倚音」はメロディアスなイメージ。

「コード」から外れているかどうかの判断は、人によっても、曲調によっても差があり厳密なものではないので、実際に作曲する時は自分の耳を頼りに感覚で判断して良いと思います。
判断に迷う場合は、この章の内容と照らし合わせてみてください。
またメロディーが決まっていてそれに合う「コード進行」を決めていく場合、メロディーにマッチしうるコードをこの章の内容を基に理論的に見つけてみてください。
きっとレバートリーは増えていくと思います。
次回は、入門編で説明した「代理コード」の配置順について説明していきます。

>>「代理コードの自然な順番」へ