コード進行パターンAメロ編(J-POP調査結果のまとめ)
コード進行一覧選定方法
昨年公開いたしました「コード進行ランキング(J-POP調査結果のまとめ)」は多くの方からご好評頂き「Meloko」開発チームとしても、とても喜ばしく思っております。
ただ、前回は
曲中での利用回数を基準に集計したため、定番のコード進行が使われやすい「サビ」向きの「コード進行」が多くなってしまったように思います。
そこで、今回は「Aメロ」(歌の導入部)にスポットを当て、「Aメロ」の歌い出しで使われていた「コード進行」だけを集計しています。
集計方法は、前回と同様、現在のJ-POPのヒット曲の中から上位数十曲を抽出し、それらの曲の中で実際に利用されているコード進行を洗い出す。という手法で調査を行いました。
実際の曲のキーは様々ですが、初心者の方でも解りやすいように「C調」に直して掲載しています。
また調査にあたって、マイナーセブンスと、細かいテンションはあってもなくても同じものとして集計しています。
例えば、ここで紹介されているコード表記が「Em」となっていても、実際の楽曲では「Em7」やその他のテンションがついて演奏されている場合がありますので、ご了承ください。
それでは「コード進行パターンAメロ編(J-POP調査結果のまとめ)」をどうぞ。
【1位】起承転結進行
コード進行(C調)
C ⇒ F ⇒ G ⇒ C
ディグリー表記
Ⅰ ⇒ Ⅳ ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅰ
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
この進行は、メジャースケールの基本の3和音を、単純に「トニック」⇒「サブドミナント」⇒「ドミナント」⇒「トニック」と並べただけのコード進行になっています。
「コード進行作曲法(入門編)」の「基本の3和音C・F・G」の中で「単純になりすぎるので避けた方が良い」と紹介している「コード進行」です。
意外な事に、避けた方が良いはずの単純なコード進行がAメロの出たしとしては最も使われているコード進行でした。
j-POPでの利用シーンでは、いずもれもこのコード進行の持つ「単純さ」「純朴さ」を活かして、楽曲のイメージを上手く作り上げています。
J-POPでの利用シーン
リンク先で表示されるコード譜を「C調」に直して確認するには「カポ:-X」の部分を参考にしてください。
リンク先の「カポ」のコンボボックスをこの数字に合わせると、コード進行を「C調」で確認できます。
【1】「水平線」by:back number の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:出来るだけ嘘は無いように)
(カポ:+2)
【2】「キンモクセイ」by:オレンジスパイニクラブ の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:溜まりに溜まって、また迷惑かけて)
(カポ:-5)
【3】「点猫の唄(feat. 井上苑子)」by:Mrs. GREEN APPLE の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:貴方の声で解れてゆく)
(カポ:0)
【2位】悲しさからの光明進行
コード進行(C調)
Am ⇒ G ⇒ F
ディグリー表記
Ⅵm ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅳ
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
「Am」の悲しげなムードから始まって、「G」をパッシングして、「F:サブドミナント」へ向かうことで、悲しさの中に明かりが見え始めるようなイメージを作り出し、次の展開への期待感が高まります。
Aメロの歌い出しのコード進行としては、ぴったりのコード進行と言えると思います。
またこのコード進行の特徴は、ベース音が「ラ」⇒「ソ」⇒「ファ」とスケールに沿って下降していくこと。
このベース音の流れがサウンド全体に美しさをプラスしています。
メロディーはメジャースケールのまま展開する場合もありますが、このコード進行に合わせて「Am」に部分転調しているケースもよく見られます。
「起承転結進行」が「明」を打ち出したコード進行ならこちらは「暗」を打ち出したコード進行と言えます。
J-POPでの利用シーン
【1】「かくれんぼ」by:優里 の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:散らかったこの狭い部屋は孤独と二人息が詰まる)
(カポ:-9)
【2】「Lemon」by:米津玄師 の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:夢ならばどれほどよかったでしょう)
(カポ:+1)
【3】「紅蓮華」by:LiSA。 の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:泥だらけの走馬灯に酔う)
(カポ:-7)
【3位】カノン進行
コード進行(C調)
C ⇒ G ⇒ Am ⇒ Em
ディグリー表記
Ⅰ ⇒ V ⇒ Ⅵm ⇒ Ⅲm
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
このコード進行は、パッヘルベルの「カノン」というクラシックの名曲に使われているコード進行で、現代のJ-POPまで脈々と受け継がれてきたコード進行です。
特徴は、何といってもなめらかな音程変化で
コード進行の構成音の中に
「ミ」⇒「レ」⇒「ド」⇒「シ」
「ド」⇒「シ」⇒「ラ」⇒「ソ」
という2つの1音ずつ下降していくラインがあることです。
この1音ずつ下降する音程変化がサウンド全体に美しさを与えています。
この「カノン進行」を使うことで、なめらかで美しい歌い出しを演出できます。
J-POPでの利用シーン
【1】「チェリー」by:スピッツ の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:君を忘れない曲がりくねった道を行く)
(カポ:0)
【2】「虹」by:菅田将暉 の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:泣いていいんだよそんな一言に)
(カポ:-5)
【4位】ベースライン順次下降進行
コード進行(C調)
C ⇒ G on B ⇒ Am ⇒ G
ディグリー表記
C ⇒ Ⅴon Ⅶ ⇒ Ⅵm ⇒ Ⅴ
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
このコード進行の特徴は、何といってもベース音の「ド」⇒「シ」⇒「ラ」⇒「ソ」というスケールに沿った下降ライン。
この1音ずつ下降するベースラインによって、聞き心地の良いサウンドを作り出しています。
自然で聞き心地が良いAメロの出だしを作るのにぴったりのコード進行になっています。
J-POPでの利用シーン
【1】「マリーゴールド」by:あいみょん の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:風の強さがちょっと心を揺さぶりすぎて)
(カポ:-2)
【2】「そっけない」by:RADWINPS の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:届きそうで届かなそうなありえそうでありえなそうな)
(カポ:0)
【5位】逆行進行
コード進行(C調)
C ⇒ G ⇒ F ⇒ C
ディグリー表記
Ⅰ ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅳ ⇒ Ⅰ
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
このコード進行は、【1位】起承転結進行のように教科書どおりに「C:トニック」⇒「F:サブドミナント」⇒「G:ドミナント」⇒「C:トニック」と進まずに、あえて「C:トニック」⇒「G:ドミナント」⇒「F:サブドミナント」⇒「C:トニック」と逆に進むことで、ちょっととがった感じを出すコード進行で、ロックの世界でよく使われているコード進行です。
最近のj-POPではあいみょんさんの楽曲によく登場しています。
J-POPでの利用シーン
【1】「裸の心を」by:あいみょん の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:いったいこのままいつまで)
(カポ:-8)
【2】「貴方解剖純愛歌~死ね~」by:あいみょん の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:あなたの両腕を切り落として)
(カポ:-7)
【6位】平行調マイナードミナントモーション拝借進行
コード進行(C調)
C ⇒ Bm-5 ⇒ E ⇒ Am
ディグリー表記
Ⅰ ⇒ Ⅶm-5 ⇒ Ⅲ ⇒ Ⅵm
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
このコード進行は、「C調」の平行調である「Aマイナー調」のドミナントモーション「E7」⇒「Am」の動きを取り入れたコード進行で、この「E7」につながりやすい「Bm-5」を経由することで、自然に「E7」につなげています。
「Bm-5」と「E7」の緊張感が、サウンドをぐっと盛り上げています。
緊張感のあるAメロの出だしを作るのに適しています。
J-POPでの利用シーン
【1】「ぎゅっと。」by:もさを。 の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:手を繋ぐと体温が上がって)
(カポ:-4)
【2】「白日」by:King Gnu の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:時には誰かを知らず知らずのうちに)
(カポ:-1)
【7位】物語の導入進行
コード進行(C調)
C/E ⇒ F ⇒ G ⇒ Am
ディグリー表記
I/Ⅲ ⇒ Ⅳ ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅵm
楽譜表記(C調)
サウンド
特徴
このコード進行の出だしの「C/E」というコードは、「C:トニック」のベース音を「C」ではなく「E」に変えたもので、「C」と「Em」の中間のような神秘的な響きを作り出しています。
またベース音を「E」に変えたことによって、ベース音が「ミ」⇒「ファ」⇒「ソ」⇒「ラ」とスケールに沿って上昇していくことになりこれから物語が始まりますよ。といったようなドキドキの期待感を演出しています。
ドキドキするような期待感を持つ「Aメロ」に適したコード進行と言えます。
J-POPでの利用シーン
【1】「ブルーベリー・ナイツ」by:マカロニえんぴつ の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:傷つかないための気付かないふりばかりだ)
(カポ:-5)
【2】「アカシア」by:BUMP OF CHICKIN の「Aメロ」
(該当箇所の歌詞:透明よりも)
(カポ:-7)
まとめ
今回の「コード進行パターンAメロ編(J-POP調査結果のまとめ)」いかがでしたでしょうか?
「Aメロ」の歌い出しは楽曲のイメージを大きく左右するので、こだわりたい人も多いと思いますが、今回はそんな方の「Aメロ」の「コード進行」って何か適切なの?という疑問にお答えできたのではないかな。と思っています。
このページの他に「初心者のための作曲講座」の中でも「定番のコード進行にメロディーをのせる(Aメロ編)」というAメロ作成に特化した記事も執筆しています。
Aメロの歌い出し作りに挑戦したい人は、ぜひ合わせてご活用いただければと思います。