1.刺繍音とは
前回、解説した「同音連打」に音程の変化を加えて、かっこよくしていくことができます。
音程の変化を加えるのに、もっとも簡単な方法は「刺繍音」を使う方法だと思います。
「刺繍音」とは、ある音から始まって、2度上昇もしくは2度下降してまた同じ音に戻ってくる場合の、2度上昇、もしくは2度下降した音のことです。
例えば「Cメジャースケール」で「I(ド)」に対する「刺繍音」は「Ⅱ(レ)」と「Ⅶ(シ)」です。
【刺繍音「Ⅱ(レ)」】
【刺繍音「Ⅶ(シ)」】
「刺繍音」という言葉は、本来は「コード」の構成音に対して「コード」の構成音でない音に移動してまた戻ってくる場合に使う言葉なので、厳密にはバックに「コード」のない「メロディー」だけの世界においては「刺繍音」という言葉は適切でないかもしれません。
ただし「Cメジャースケール」において、小節の先頭が「C(ド)」で始まっているようなケースにおいては、リスナーは暗黙的に「C(ド)」の音を含む「コード」を想定して聴いている面があるので、ここでは「刺繍音」という言葉を使っていこうと思います。
「コード」がバックに入ると、同じメロディーでも「刺繍音」扱いでなくなる場合もあります。
その場合、雰囲気も変わってきます。
この辺りは後の講義で説明していきます。
2.刺繍音を含むメロディーの作り方
それでは「刺繍音」を含む「メロディー」について、その作り方を説明していきます。
【STEP1】テンポ、音符の長さ、音の高さを選ぶ
①テンポの選び方
テンポについては「同音連打」同様、どのようなテンポでも大丈夫だと思います。
ここでは仮決めで「bpm=129」とします。
②音符の長さの選び方
同音連打同様、自然な会話の速度で良いと思いますが、音程が上下に揺れるので、同音連打よりもほんの少しだけ長めの音符とする方が歌いやすくて良いと思います。
テンポとの兼ね合いで以下を指標値としてください。
[bpm60~bpm120]
16分音符か、8分音符を選択します。
[bpm121~bpm200]
8分音符を選択します。
ここでは①で「bpm=129」としているので「8分音符」と決めます。
③音の高さの選び方
刺繍音を使う場合、メジャースケール上の7音 × 上か下の2パタンなので、計14パターンが存在しています。
それぞれに表情があると思いますので、候補を出して聴き比べて決めていきましょう。
例えば「I(ド)」を基準とする場合「Ⅱ(レ)」を「刺繍音」にするパターンと「Ⅶ(シ)」を「刺繍音」にするパターンがあるので、両者を聴き比べます。
【刺繍音「Ⅱ(レ)」】
【刺繍音「Ⅶ(シ)」】
刺繍音「Ⅱ(レ)」とする場合は、音が高くなることもあって、前向きな明るい響き、刺繍音「Ⅶ(シ)」とする場合は、少し暗めで陰のある感じです。
感じ方は、人それぞれ違うと思います。
イメージに合う方を採用しましょう。
今回は仮決めで「ドシド」を採用します。
④決定事項
以下のように決まりました。
「テンポ」=129bpm
「音符の長さ」=8分音符
「音高(メイン)」=「Ⅰ(ド)」
「音高(刺繍音)」=「Ⅶ(シ)」
【STEP2】1小節に敷き詰める
【STEP1】の決定事項をもに、1小節に敷き詰めていきます。
以下のようになります。
「モチーフ」の骨格ができました。
このままだと重い感じなので、次のSTEPで音を間引いていきます。
【STEP3】音を間引く
音符を間引いて軽くします。
間引き方については、以下の2種類あります。
①一つの音を伸ばす(結果的に音数が減る)
②音符を削除する
今回は、さらに①②の結果に応じて、適切に音符を移動して以下のような作戦を練ることにします。
では、この加工をしたものを聴いてみましょう。
今回はこれをモチーフとします。
【STEP4】モチーフの展開
【STEP3】で作られたモチーフを展開していきます。
同音連打の時には、2度ずつピッチを下げていくパターンを使いましたので今度は2度ずつ上げてみましょう。
ただし、同音連打の時よりもテンポが早く音数が少ないので、同音連打の時よりも鬱陶しいと感じるタイミングが遅いであろうと予測して、ピッチをあげるタイミングは、1小節目~2小節目ではなく、2小節目~3小節目とします。
また、最後の4小節目は、音高を変更するとともに、長めの音使いにしてメロディーの1区切りを演出していきます。
一般に、繰り返しのメロディーの中で、それまでよりも長めの音使いがくるとメロディーの区切りとして認識されます。
具体的には以下のようにします。
【1小節目】
【2小節目】
【3小節目】
ここで「モチーフ」全体のピッチを2度あげます。
【4小節目】
では、できあがった「メロディー」を聴いてみましょう。
いかがでしょうか?
かっこいいメロディーができたのではないでしょうか。
3.まとめ
今回は「同音連打」を発展させて「刺繍音」を使った「メロディー」の作り方を学習しました。
「刺繍音」を使う場合「同音連打」よりもバリエーションが増えると思います。
多くの「モチーフ」ができあがると思いますので、場合によっては、かっこいいメロディーも曲の展開上、採用しないケースも出てくると思います。
そういう場合は、作った「メロディー」をどこかに保存しておきましょう。
「作曲」活動を長く続けていけば、過去に作った「メロディー」は貴重な財産になってくると思います。
次回は「順次進行」を使ったメロディーの作り方について、解説していきます。