1.メロディーの作り方を学ぶ意味
初心者の方の場合、特別メロディーの作り方を学ばなくても、メロディーがビシバシ思い浮かぶという人は稀ですし、中級者になっても、メロディーが思いついちゃって思いついちゃって仕方がないという人はあまりいないと思います。
特に、曲としてまとめあげる際に「Aメロ」と「サビ」はできたんだけど「Bメロ」がどうしても思い浮かばない。
といったようなことは必ずと言って良いほど起こると思います。
ですので、思いつきが重要な「メロディー」の分野ではありますが「よくあるメロディーの作り方」について学んでおくことはとても有意義だと思いますので、解説していきます。
2.同音連打のメロディー
「歌モノ」のメロディーの定番中の定番として、同じ音を連続的に歌うというメロディーがあります。
同音を連打をしている名曲は、数えきれないほどたくさんあります。
この同音連打パターンの「メロディー」は比較的簡単なステップで作れてしまうので、作曲初心者の方に特におすすめです。
当講座で初心者の方におすすめする「同音連打のメロディー」の作成手順は以下のようになります。
【STEP1】テンポ、連打する音符、音の高さを選ぶ
同音連打するメロディーの「テンポ」と「連打する音符」「音の高さ」を選びます。
①「テンポ」の選び方
同音連打パターンは、様々な「テンポ」で使われているので「テンポ」は自由に決めて大丈夫です。
ただ、あまりに遅すぎるか、あまりに早すぎる場合、歌えなくなるので「歌モノ」としては、不適切になってきます。
bpm60~bpm200を選ぶのが無難だと思います。
(「bpm」は「Beats Per Minute」の略で、一分間にどれだけのBeat(拍)が演奏されるかを示しています。)
ここでは仮決めで「bpm=80」とします。
②連打する音符の選び方
同音連打パターンは、状況説明的な歌詞がのることが多いと思いますので、連打する音は自然な会話の速度になるように、テンポとの兼ね合いで決めていきます。
[bpm60~bpm130]
16分音符か、8分音符を選択します。
[bpm131~bpm200]
8分音符を選択します。
ここでは①で「bpm=80」としているので「16分音符」と決めます。
③音の高さを選ぶ
連打する音の高さは「スケール」に応じて決めていきます。
ある特定の「スケール」に依存した事ではないので「ディグリーネーム」で表記していきます。
()内は「Cメジャースケール」の場合の音名です。
(※「ディグリーネーム」が良く解らない人は「作曲に必要な音楽用語(ディグリーネーム)」を参照してください。)
(※伴奏が入るとイメージはまったく変わってくるので、あくまでざっくりとした方向性と捉えてください。)
[ I(ド) ]
安定感のあるどっしりしたメロディー
[ Ⅱ(レ) ]
エモいメロディー、この後「C(ド)」にいきそうな雰囲気を漂わす
[ Ⅲ(ミ) ]
メロディアスな明るさのあるメロディー
[ Ⅳ(ファ) ]
緊張感のあるメロディー、サビ的な雰囲気が漂う
[ Ⅴ(ソ) ]
力強いメロディー、少し機械的
[ Ⅵ(ラ) ]
メロディアスだがE(ミ)よりも田舎ぽく、少し暗い雰囲気
[ Ⅶ(シ) ]
危うい感じのメロディー。せつなく、歯がゆい感じ
ここでは仮で「Ⅲ(ミ)」を使って、メロディアスな同音連打を狙ってみます。
④決定事項
以下のように決まりました。
「テンポ」=80bpm
「音符」=16分音符
「音の高さ」=Ⅲ(ミ)
【STEP2】一小節に敷き詰める
【STEP1】での決定事項を元に、一小節に隙間なく敷き詰めていきます。
最終的に以下のような形になります。
「作曲を始めるにあたって必要なツール」で記録できるものとして「メロコ」を選択した場合の操作手順を示していきます。
記録できるものとして「メロコ」以外を準備した方は、その準備したものに応じた操作を行ってください。
<メロコでの操作方法>
「メロディー」の「編集」モードになっていない場合は、「メロディー」の「編集」モードに変えていきます。
※右上に「編集(メロディー)」と表示されている場合は、「メロディー」の「編集」モードに既になっています。
この時点で「メロディー」以外の「編集」モードになっている場合は、さらに編集対象を「メロディー」に変えていきます。
同じ操作を16回繰り返して、一小節を全て16分音符で埋めます。
それでは、聴いてみましょう。
はい。
ちょっと鬱陶しいですね。
次のステップでこの鬱陶しさを解消していきます。
【STEP3】間引く
鬱陶しいと思う部分の音を間引いていきます。
間引き方は、2種類あります。
①複数の音を統合して一つの音符にする。
②休符に変更する。
この処理を鬱陶しさがなくなるまで行います。
今回は、以下の計画を立てることにします。
ではこの処理を適用します。
<「メロコ」での操作方法>
それでは、聴いてみましょう
鬱陶しさはある程度なくなりましたが、少し淡泊ですね。
淡泊さを無くすためには、音の高さ(ピッチ)を変更します。
次のステップで、音の高さを変更していきます。
【STEP4】音の高さを変更する
音の高さを変更して淡泊さを解消していきます。
音はそんなに大きく変動させなくても良いと思いますが、「前半」「後半」に分けるとすれば「後半」の音を変更した方が効果は高いと思います。
ここでは、最後の2音を2度だけあげることを計画します。
<「メロコ」での操作方法>
できました。
では聞いてみましょう。
退屈感はなくなったのではないでしょうか。
まだ改造することも可能ですが、今回はこれを「モチーフ」とします。
「モチーフ」というのは「メロディー」を形成する上での基本系となる小さな塊のことで、多くの場合、この「モチーフ」を少しずつ変化させながら繰り返していくことで、「メロディー」を作ります。
【STEP5】モチーフの展開
【STEP4】で作られたモチーフを使って、3小節に伸ばすことを考えます。
「モチーフ」がちょうど1小節分なので3回繰り返すことにします。
単純に繰り返すと、退屈なメロディーになってしまうので、変化をつけていきます。
「モチーフ」の繰り返しに変化をつける方法はいくつもありますが、比較的、汎用的なやりかたに先頭の音を、2度ずつ下げていくもしくは2度ずつ上げていくというやり方があります。
今回は先頭の音を2度ずつ下げていくやり方を適用してみます。
仕上がりのイメージは以下のようになります。
【モチーフ】
【2小節目】
【3小節目】
楽譜の操作の手順は省略して、モチーフ展開後の音を聞いてみましょう。
ちょっと曲っぽくなってきました。
ただ曲の「フレーズ」として3小節というのは扱いにくい状態です。
曲というのは、4小節、8小節、12小節といった4の倍数の小節数にするとおさまりが良くなります。
次のSTEPで、このメロディーに4小節目をつけて、まとめあげていきます。
【STEP6】モチーフの展開(締め)
現在、3小節目まできているので最後の4小節目を追加していくわけですが、ここで、メロディーの方向性を決める必要があります。
それは、このメロディーのストーリーをここで、一旦、区切るのか?区切らないのか?ということです。
一旦、区切る場合には、メロディーの最後の音を「Ⅰ(ド)(※)」とし、少し長めの音符にしてください。
こうすると「メロディー」に一段落ついた感覚を与えることができます。
この一段落ついた感覚を「終止感」と言います。
※スケールのルートとなる音という意味です。今回は「Cメジャースケール」なので「C」=「ド」が終止感を出せる音になりますが、もし「Dメジャースケール」なら「D(レ)」の音が「終止感」を出せる音になります。
例えば、以下のようなメロディーです。
①終止感のあるメロディー
【4小節目】
では、聴いてみましょう。
いかがでしょうか?
とりあえず一つの「フレーズ」としてまとまりが出てきたと思います。
②終止感のないメロディー
まだ続くよ。という感覚を出す場合には、「Ⅰ(ド)」以外の音を最後に持ってきます。
特に「Ⅱ(レ)」「Ⅳ(ファ)」「Ⅶ(シ)」は続いていく感覚の強い音になります。
例えば、以下のようなメロディーです。
【4小節目】
では、聴いてみましょう。
いかがでしょうか?
「メロディー」にまだ続く感じがでましたよね。
この時点で、また同じ「モチーフ」がくることをうっすら予感させますが、曲として退屈させないためには、その予感は裏切ってまったく別の「モチーフ」の展開をつなげた方がむしろ良いと思います。
選ぶ音によって「リスナー」に次にくる展開を予想させる事はできますが、その予想どおりに事が運ぶメロディーは退屈です。
適度に裏切っていくことで、おもしろみのある「メロディー」になっていきます。
3.まとめ
今回は、同音連打のメロディーの作り方について、学習していきました。
同音連打パターンのメロディーは、今回紹介した作り方で作る場合、選ぶ音、間引き方、できたモチーフの展開のさせかたによって、様々なバリエーションが生まれてくると思います。
色々と試して、しっくりくる「メロディー」を探してください。
良いメロディーを作るには試行錯誤が大切です。
次回は「刺繍音」を使った「メロディー」の作り方の解説をしていきます。