1.コードとメロディーの関係性

「コード」と「メロディー」は密接な関係があり、「コード」が決まると「メロディー」もある程度その方向性が決まります。
そして、聴き心地の良い「コード」にきちんとマッチするメロディーは、聴き心地の良い「メロディー」になります
今回は、その「コード進行」の力を存分に借りて、聴き心地の良い「メロディー」を作っていく方法を解説していきます。

2.対象のコード進行の選択

聴き心地の良いコード進行は、パターン化されていて、J-POPでは、同じ「コード進行」が繰り返し利用されています
その繰り返し利用されている「コード進行」について、実際にJ-POPのヒット曲を調査してランキング形式でまとめあげたのがこちらです。

>「コード進行ランキング(J-POP調査結果のまとめ)」

この中から「Aメロ」に合う「コード進行」を選んでいきましょう。
資料上に「Aメロ」のマッチ度が書かれているので、星が5つのものを選んでいきます。
今回は、仮決めで「【11位】逆行進行」を使っていくことにします。

Ⅰ ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅳ ⇒ C

という進行ですね。
(注)
これは「ディグリーネーム」という表記です。
ディグリーネームについて、よく解らない場合は、下記を確認してください。
>「作曲に必要な音楽用語(ディグリーネーム)」

これを、「C調」のコードに直すと

C ⇒ G ⇒ F ⇒ C

です。
サウンドは、こんな感じです。

では、この「コード進行」に「メロディー」を追加していきます。

3.メロディーの追加手順

【STEP1】テンポを選ぶ

60bpm ~ 90bpm の範囲のテンポを選ぶと、落ち着いた雰囲気になります。
人間の心拍数は、60bpm ~ 90bpm なので、その事に関連しているのではないか?
と言われています。
(補足)
bpmは「Beats Par Minutes」の頭文字をとったもので一分間に何回の拍を刻むのか?という単位です。

バラードなどしっかり聞かせる曲を作る場合はこの範囲で作ると良いと思います。
一般的な目安は以下のようになると思います。

[バラード(落ち着いた雰囲気)]

60bpm ~ 90bpm

[ミディアム(元気な雰囲気)]

90bpm~140bpm

[アップテンポ(高揚感のある雰囲気)]

140bpm~200bpm

<メロコを使った場合の操作方法>

作曲アプリにメロコを用いている場合、テンポの変更方法は、下記で確認できます。
>「テンポの変更方法」
他のツールを使う場合は、そのツールにあった操作をしてください。

今回は仮決めで「95bpm」とします。
すこしバラードよりなミディアムテンポな曲に仕上がると思います。

【STEP2】リズムパターンを選ぶ

次にリズムパターンを選びます。
「メロディー」は、バックで刻まれる「リズム」に大きく左右されます。
コードにも、リズムパターンを設定しておいた方が「メロディー」が思い浮かびやすくなると思います。

リズムパターンを考える場合、適切な発音の密度を考える必要があります。
早いテンポの場合、発音タイミングが多すぎると、ちょっとやかましくなりますし、遅いテンポの場合、発音タイミングが少なすぎると、間延びした感じになります。
例えば、アコースティックギターのコードストロークで考えた場合、以下のような密度が適切になってきます。

[80bpmくらい]

16分音符などをふんだんに使ったリズムパタン(密度高)
例えば、こんなリズムです。

16分音符をふんだんに使ったリズム

[120bpm]

8分音符を中心に、4分音符、16分音符が混じるリズムパタン(密度中)
例えば、こんなリズムです。

密度中のリズムパターン

[140bpm~200bpm]

4分音符を中心に8分音符が混じるリズムパタン(密度低)
例えば、こんなリズムです。

密度低のリズムパターン

<メロコでの操作方法>

メロコでリズムパタンを変える方法は下記を参照してください。
>「「演奏パターン」の変更方法」

メロコを使い、bpm95で、適切なリズムパタンを適用した例がこちらです。

【STEP3】イントロを付ける

Aメロを考える場合、イントロ小節があった方が良いと思います。
理由は2つあります。

【理由1】

最初のコードより左側にはみ出すメロディーの音符をのせる小節がない状況を回避するため
別の言い方をすると、イントロ小節を付けておかないと、最初のコードよりも左側にはみ出す「メロディー」を作れず、それだけ作れるメロディーのバリエーションが少なくなってしまうということです。
最初のコードよりも左側にはみ出しているメロディーを持つ名曲は、本当にたくさんありますので、このことはとてももったいないことです。

【理由2】

イントロの音に誘因されて、適切な音高のメロディーを思いつきやすいから。
実を言うと、私たちはスケール上のある音を聞いた時、次にくる音をある程度、予測して聴いています
その予測どおりの音がくると、安心感があったり単調に感じたりしますし、その予測が裏切れると、インパクトを感じたり、場合によっては不快に感じたりします。
この人間の次の音予測機能のおかげで、イントロの音を聞くことで、自然とそのスケール内の適切な音が口から出てくるようになるはずです。
またそうやって出てきた音は、聴き心地の良い自然なメロディーになりやすくなります。

それでは、Aメロにイントロを付けていきます。
ここでは、曲として完成させるための「イントロ」ではなく、あくまで「Aメロ」を思いつきやすくするための「イントロ」ですので、
2小節で良いと思います。
先頭のコードが「C」なので、
「Dm7」⇒「G」
とします。
こうすることで「C」にマッチする「メロディー」につながる音が思いつくようになると思います。
なぜ「Dm7」⇒「G」が「C」につながりやすいのか?
というのは、後の講義で説明していきます。
先頭「C」で始まるAメロは、数多くありますので、ここでは
先頭「C」で始まる場合、イントロは「Dm7」⇒「G」が使える
と覚えてください。

リズムパタンは【STEP2】のパタンをそのまま使いますが、最後の「G」は、長い音符を使って、歌いだしを自由に入れる隙間をあけてあげると良いと思います。

では、イントロの小節を「2小節」追加していきます。

「メロコ」で小節を追加する方法は「一括編集の使い方」を参照してください。

「イントロ」追加後が、こちらです。

いかがでしょうか?
Aメロが思い浮かびそうな雰囲気がしてきましたでしょうか?

【STEP4】メロディーのとる音の範囲を決める。

「歌モノ」を作る場合、作成する「メロディー」は歌える範囲内でなければいけません。
また「サビ」を中心に考えて「Aメロ」は「歌える範囲」の中でも、少し低めの音高を狙っていくと「Bメロ」「サビ」にいった時に「メロディー」の構成音が高くなっていくことになるので、盛り上がり感が得られます
J-POPの名曲の中でも、ほとんどの曲が「Aメロ」より「Bメロ」、「Bメロ」より「サビ」の方が構成音が高く設定されています。
具体的には、以下のような範囲で「メロディー」を構成していくと良いと思います。

<一般的な男声のメロディー構成音>

男性ボーカルの範囲の目安

ト音記号で表すと、一般的な男声ボーカルの音域はこういった範囲になるのですが、ト音記号の5線から大きく外れてしまっているので、読みづらいですね。
この読みづらさを解決するために、ボーカル譜では、実際の音よりも一オクターブ高く表記するのが通例です。
以下のようになります。

<一般的な男性のメロディー構成音(オクターブ補正時)>

男声ボーカル1オクターブ高く表記

4分音符や、8分音符という短い長さの音符が、半音、全音はみ出るのは構いませんが、基本的にこの範囲に収まるようにしていくと良いと思います。
(補足)
「Bメロのサビへのアプローチ部分」は、サビ前に盛り上がりがくるパターンの盛り上がりの部分です。
曲によって、あったりなかったりします。
(補足)
作曲ツールに「メロコ」をお使いの場合、1オクターブ高く音符を表示する機能を使ってください。
操作方法は、
>>「音符を一オクターブ高く表示」を参照してください。

一般的な女性のメロディーの構成音は下記のようになります。

<一般的な女声のメロディー構成音>

(補足)
女声ボーカルの場合でも、男声ボーカルと同様に一オクターブ高く表記されている楽譜も多くあります。
上記の一般的な女性ボーカルの音域が解っていれば、一オクターブ高く表記されているのか、実音のまま表記されているのか区別がつくはずです。

今回は、仮決めで男性ボーカル向けの歌モノを作っていくことにします。

【STEP5】コード進行を元にメロディーの主な音を決める

今回、選んだコード進行は

C ⇒ G ⇒ F ⇒ C

です。
これを、前述の「Aメロ」の範囲で表すと、以下のようになります。

Aメロの主要音

この中から「3度」の音、「5度」の音を中心に、使用する音を選んでいきます。
「ルート」の音を使ってもかまいませんが、全部「ルート」の音とするのは単純になりすぎるので、避ける方が無難です。
今回は仮決めで、以下の音を選びます。

CGFCからメロディー主要音を選ぶ

これを【STEP3】で作ったコード進行に4部音符で、1小節目にのせていきます。
メロコを使って、コード進行に主要音を足すとこんな感じになります。

まずは「メロディー」の方向性が決まりました。
ここに肉付けをして「メロディー」を作っていきます。

【STEP6】先頭の入り方を決める

先頭の音の入り方は3種類考えられます。

①1拍目より先に始める

1拍目より先に始めると、情緒のある重めの「メロディー」展開になってくると思います。
例えば、こんな入り方です。

②1拍目から入る

この場合、力強いメロディーになりますが、少し単純さが出てくると思います。
例えば、こんな入り方です。

③一拍目より後から入る

この場合、先頭が休符になるので、少し落ち着いた雰囲気というか、ドライな入り方になります。
また休符のアクセントになって、ちょっとオッと思わせるメロディーになります。

先頭の入り方は「メロディー」の色を決定づける重要な要素なので、よく検討しましょう。
特に「②1拍目から入る」のパターンを採用すると、少し単純さが出てくるので、その効果を狙っていない場合は避けた方が良いかもしれません。
(逆に、純朴な感じを狙うなら「②1拍目から入る」パターンを選択すると良いと思います。)
今回は、「①1拍目より先に始める」を採用して、情緒を感じさせるメロディーを目指します。

【STEP7】音をつなぐ(最初のフレーズ)

先頭の音が「ミ」なので、この音にたどり着くように音を足して、フレーズを作っていきます。
この時、リズムを意識しましょう。
既に【STEP2】で、伴奏のリズムが入っているので、リズムのノリと同じ8分音符を中心に16分音符を少し使うと、素直なメロディーになると思います。
【STEP5】で作った

を何度も聞いて、思いつくままに入れていきます。
何も思いつかない人は、
「同音連打のメロディー」
「刺繍音のメロディー」
「順次進行のメロディー」
「跳躍進行のメロディー」
で解説した方法をもう一度確認して、メロディーをひねり出してください。

ここでは「刺繍音」パターンを使って、以下のようなメロディーを入れてみました。


ここで作った「メロディー」で、おやっと思うところがあると思います。
「C」の構成音の「ミ」が一拍目よりも左に飛び出しちゃっています。
このように、コード構成音は、左に少しはみ出してしまってもOKです。

コード構成音が少し左にはみ出す

その場合、メロディーが先に「C」の構成音を奏でて、間髪入れずに「C」の伴奏が追い付く動きになって、かっこいい感じになります。

コードの構成音に対して「同音連打」「刺繍音」「順次進行」「跳躍進行」でつないでいく場合、ほとんどのケースでコードにマッチする音になるので、感覚で入れていって、違和感があったら変更するという形で良いと思います。
「コード」と「メロディー」の合う、合わないのルールをきちんと知りたい人は、
「「コード」に合う「メロディー」の法則」
で解説しているので、参考にしてください。

【STEP8】音をつなぐ(2つ目のフレーズ)

2つ目のフレーズも同様に、入れていきます。
【STEP7】の音をよく聞いて、思いつくまま入れていきます。
【STEP7】のモチーフを活かした方が、つながりが出てきますが、まったく違うモチーフをぶつけても味が出てくると思います。

今回は、最初のフレーズのモチーフのニュアンスを引継ぎつつ、新たな長めのモチーフで以下のように作ってみました。

いかがでしょうか?
【STEP5】で作った「メロディー」の骨格を「同音連打」「順次進行」「跳躍進行」を使って上手く肉付けできましたでしょうか?

【STEP9】音をつなぐ(残りのフレーズ)

【STEP8】の音を良く聞いて、思いつくままに入れていきます。
今回は、3小節目の「G」、4小節目「C」をいっきにつなぐメロディーを作ってみます。

複数の小節をいっきにつなぐメロディーを作っても、まったくかまいません。
ただし、複数小節にまたがるフレーズを作る場合、息継ぎが可能かどうか、歌ってみて確認した方が良いです。
息継ぎのできないメロディーは、歌えません。

【STEP10】小節を伸ばす

この時点でAメロは4小節できましたが、一般的には4小節だと少し短いと思います。
さらに4小節追加していきます。

>「コード進行ランキング(J-POP調査結果のまとめ)」

の中から、次の4小節を選びましょう。
最後のコードが「C」なので「C」以外を選ぶと良いと思います。
「C」が2連続でくると退屈感が出てきます
また、ここまでのコード進行が
「C」⇒「G」⇒「F」⇒「C」
となっていてマイナーコードがまったく出てきていません。
ここでマイナーコードを含む「コード進行」を選んだ方がバランスはよくなると思います。
では、今回は
【5位】期待感どきどき進行
「Am」⇒「Em」⇒「F」⇒「G」
を選ぶことにします。

では、このコード進行を現在の「メロディー」につないでいきます。
こんな感じになります。

【STEP11】Aメロの締め部分を設ける

このままの「コード進行」でもAメロは作ることはできますが、最後が「V(G)」なので、Aメロが終わった感覚は出せないと思います。
Aメロが終った感覚を出すには、最後のコードを「Ⅰ(C)」にした方が良いと思います。
そこで、最後の2小節「Ⅳ(F)」⇒「Ⅴ(G)」の部分を、最後が「Ⅰ(C)」になるように、改造していきます。

【改造内容】

コード進行を改造して終止感を生み出す

コード進行の改造後のサウンドがこちらです。

最後の「C」できちんと「Aメロ」が終わったという感覚が出たと思います。
これを「終止感」と言います。
「終止感」の出るコード進行は色々ありますが、ここでは、基本の「Ⅴ(G)」⇒「Ⅰ(C)」は終止感が出るという事を覚えてください。
(補足)
「終止感」等の「コード進行」の役割について学びたい人は
「基本の3和音C・F・G」
およびその周辺の記事を参照してください。

【STEP12】コード進行を元にメロディーの主な音を決める(後半戦)

【STEP5】と同様にコード構成音から主要な音を選んでいきます。

コード進行を元にメロディーの主な音を決める

今回、最終小節の「C」のところで「終止感」を出す作戦なので、最後の音は「C(ド)」を選んでいます。
メロディーはスケールのルート(今回の場合「C(ド)」)で終わると「終止感」が出ます
主要音を入れたものがこちらです。

【STEP13】Aメロ後半の最初のワンフレーズを入れる

【STEP12】で作ったコードの主要音を聴いて、思いつくままに、メロディーを入れていきます。
もしも、思い浮かばない場合は、これまでのメロディーで使った「モチーフ」が使えないか、検討していきます。
ここでは1小節目のモチーフがそのまま5小節目で使えそうです。

1小節目のモチーフをそのまま、5小節目で使う

この同じモチーフを使いまわすパターンは、いろんなところで使えます。
そして同じモチーフを繰り返すことで、印象的なメロディーになっていきます
ただし、あまりやりすぎるとクドい感じになるので、バランスをとっていきましょう。

1小節目のモチーフをコピーしたサウンドがこちらです。

【STEP14】主要音をつなぎAメロを完成させる

【STEP13】で作ったメロディーの主要音を、「同音連打」「刺繍音」「順次進行」「跳躍進行」を使って、つないでいきます。
【STEP13】サウンドを何度も聞いて、ひねりだしてください。
どうしてもイメージが沸かない場合は、【STEP12】に戻って使用する主要音を変更してみましょう。
ここでは、以下のようなメロディーを作ってみました。

【Aメロ完成系】

いかがでしょうか?
まとまりのあるメロディーができたのではないでしょうか?
そして「STEP12」で、意図的に「終止感」を出したので、次に「Bメロ」に進みやすいサウンドになっていると思います。

4.まとめ

今回は定番の「コード進行」から「Aメロ」を作るというテーマで解説しました。
J-POPで良く使われている「コード進行」の力を借りたので、いままでよりかっこいい「メロディー」が作れたのではないでしょうか?
この章の解説のとおりにやっても、どうしても「メロディー」が思い浮かばないという人は、選ぶ「コード進行」を変えるか、もしくは「コード進行」はそのままで「キー」を変えると良いと思います。
「キー」が変わると雰囲気が変わるので、ふとイメージが膨らんだりします。
特に歌いながら作る人は自分の喉にあった「キー」の音を聴いた時に、いっきに「メロディー」があふれ出すという事がおこるようです。
「メロコ」をお使いの場合「キー」の変更方法は、
「キーの変更方法について」
を参照してください。
次回は、定番のコード進行に「Bメロ」をのせる方法を解説していきます。

>>「定番のコード進行にメロディーをのせる(Bメロ編)」へ

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