1.コードとは?
音高の異なる2つ以上の音が同時になっている状態を「コード」と言います。
「コード」は、日本語では「和音」と言います。
「コード」は、その構成音に応じて「コードネーム」という名前がつけられています。
「コードネーム」を見れば、その「コード」に含まれる構成音が解るという仕組みになっています。
例えば「C」という「コードネーム」を見たら「ド」と「ミ」と「ソ」が同時になっている状態だな。
という事が解るということです。
「歌モノ」の楽譜を見ると、たいていの場合、5線の上部に「C」とか「Dm7」とか書かれていると思いますが、これが「コードネーム」です。
2.作曲においてなぜ重要なのか?
①メロディーの想定している伴奏を指し示せる
「メロディー」はそれ単体でも、強力なイメージを持っています。
しかしながら同じ「メロディー」であっても、バックに流れる伴奏との関係性によって、微妙にそのイメージを変えます。
そのため、作曲においては「メロディー」だけではなく、ある程度、想定している伴奏をつけた方が良い面があって、「コードネーム」は、前述のとおり伴奏の構成音を簡潔に示すことができるという特性上、作曲者が曲を発表するにあたって、とても都合が良いものになっています。
②体系化された作曲理論を継承できる
音には同時に発音された時の固有のイメージ、前後関係での固有のイメージがあります。
例えば「Cメジャースケール」において、「ソ、シ、レ、ファ」という和音を鳴らした後、「ド、ミ、ソ」という和音を鳴らすと、私達は、曲が終わったというような感覚を感じます。
これを「終止感」と言いますが、
「「ソ、シ、レ、ファ」という和音を鳴らした後、「ド、ミ、ソ」という和音を鳴らす」
の部分を、
「コードネーム」を使えば、
G7⇒C
のように簡潔に表すことができます。
G7⇒Cのような「コード」の連続的な流れを「コード進行」と言います。
この簡潔性ゆえ「コードネーム」を使って解説された「作曲理論」が、書籍やネット上に膨大な量、存在しています。
これらを学ぶことで、人が心地よく感じる音のつながりが体系化された「コード進行」を使って作曲ができるようになります。
偉大な作曲家たちの残してくれた「音楽理論」を、きちんと理解し自分のものとするには、「コード」の理解が必要です。
3.命名規約
「コード」を学ぶ上で、一番はじめにやるべきことは、よく使われるコードの命名規約を覚えることです。
命名規約だけ覚えていれば、和音を鳴らせる楽器によって、その音を再現し確認することができます。
この章では全体をとおし、よく使われるコードの命名規約を解説していきます。
この章を読み終わると「歌モノ」の楽譜の「コード」の部分について「メロディー」の裏で、どのような音が鳴っている状態なのか解るようになります。
4.同時になる構成音の数
「1.コードとは?」で述べたとおり、音高の異なる2つ以上の音が鳴っていれば「コード」ですが、2音というコードは「歌モノ」では、あまり使われませんし、5音以上というコードもあまり使われません。
ここでは、3つの音高の異なる音が同時になっているコードと、4つの音高の異なる音が同時になっているコードについて解説していきます。
構成音が3つのコードを「3和音」
構成音が4つのコードを「4和音」
と言います。
※3か4かは、あくまで「音高」のことなる音の数をカウントします。例えば、「ド」と「ミ」と「ソ」と「ド」が同時になっているような場合、一つ目の「ド」と4つ目の「ド」は同じ音なので「4和音」ではなく「3和音」となります。
5.3和音
①メジャーコード
3和音の代表は、メジャーコードです。
【構成音】
例えば「C(ド)」を中心とするメジャーコードの構成音は、こんな形になっています。
低い音から「C(ド)」を「ルート」
2番目の音「E(ミ)」を「3度の音」
3番目の音「G(ソ)」を「5度の音」
と呼びます。
ここで「ルート」の音からの「3度の音」「5度の音」の音程を確認していきます。
「ルート」から「3度の音」である「E(ミ)」までには、黒鍵、白鍵、黒鍵、白鍵があるので4半音です。4半音は、度数で言うと「長3度」です。
※「長3度」など、音程の数え方が良く解らない人は「作曲に必要な音楽用語(音名と音程)」を見て復習してください。
「ルート」から「5度の音」である「G(ソ)」までには、黒鍵、白鍵、黒鍵、白鍵、白鍵、黒鍵、白鍵があるので7半音です。7半音は度数で言うと「完全5度」です。
メジャーコードの各音の距離の決まりは以下のようになります。
この構成音の決まりを満たすコードが、メジャーコードと呼ばれます。
この構成音の決まりは「ルートからの距離」を表していますので、例えばルートを2半音上げて「D(レ)」とする「Dメジャー」の構成音は、以下のようになって「3度の音」「5度の音」もルートの移動幅に合わせて一緒に移動することになります。
【表記】
メジャーコードは、シンプルにルートだけを書きます。
例えば、Cメジャーは、
C
と書かれます。
【サウンド】
例えば「C」は、以下のような音になります。
メジャーコードは明るい響きのコードになっています。
②マイナーコード
メジャーコードよりも暗い響きのマイナーコードという3和音があります。
【構成音】
たとえば「C(ド)」をルートとするマイナーコードの構成音は、こんな形になっています。
「ルート」から構成音までの音程は以下のようになっています。
メジャーコードと比べると、3度の音が半音低くなっています。
違いはこれだけです。
マイナーコードの各音の距離の決まりは以下のようになります。
この構成音の決まりを満たすコードが、マイナーコードと呼ばれます。
【表記】
マイナーコードは、ルートの右どなりに「m」もしくは「min」をつけて表記します。
例えば、Cマイナーは、
Cm
Cmin
と書かれます。
【サウンド】
例えば「Cmin」は、以下のような音になります。
マイナーコードはメジャーコードに比べて暗い響きになっています。
③sus4
3度の音がメジャーでもマイナーでもなく4度となっているsus4というコードもよく使われるコードです。
【構成音】
例えば「C」のsus4の構成音は以下のようになっています。
ルート音から各構成音までの距離は以下のようになっています。
この構成音の決まりを満たすコードが、sus4コードと呼ばれます。
【表記】
sus4は「ルート」の右隣りに「sus4」をつけて、
Csus4
といったように表記されます。
【サウンド】
例えば「Csus4」はこんな音です。
sus4は明るくも暗くもない浮遊感のある響きになっています。
④sus2
メジャー、マイナーコードの3rdの音を長2度の音に変化させたコードを「sus2」と言います。
【構成音】
sus2の構成音は以下のようになっています。
ルートからの各構成音までの距離は以下のようになります。
この構成音の決まりを満たすコードが、sus2コードと呼ばれます。
【表記】
sus2はルート音の右隣りに「sus2」をつけて、
Csus2
といったように表記します。
【サウンド】
例えば「Csus2」はこんな音になります。
sus2はきらびやかな響きになっています。
⑤aug
「メジャーコード」の5度の音を半音あげた「オーギュメント」というコードもあります。
【構成音】
オーギュメントの構成音は以下のようになっています。
ルートから各音までの距離は以下のようになっています。
この構成音の決まりを満たすコードが、オーギュメントと呼ばれます。
【表記】
オーギュメントは、ルート音の右どなりに「aug」をつけて、
Caug
といったように表します。
【サウンド】
例えば「Caug」はこんな音になります。
オーギュメントは不思議な世界観のある響きになっています。
⑥マイナーフラットファイブ
マイナーコードの5度の音を半分下げた「マイナーフラットファイブ」というコードもあります。
【構成音】
マイナーフラットファイブの構成音は以下のようになっています。
ルートから各構成音までの距離は以下のようになっています。
この構成音の決まりを満たすコードが、マイナーフラットファイブと呼ばれます。
【表記】
マイナーフラットファイブは、マイナーコードの右どなりに「(-5)」「(♭5)」やカッコのない「-5」などをつけて
Cm(-5)
Cm(♭5)
Cm-5
などと表記されます。
※スラッシュを使って、Cmin/♭5、Cm/♭5と表記される場合もあります。
※フラットファイブは、メジャーコードに使われて、C(-5)となる場合もあります。
【サウンド】
例えば「Cm(-5)」は、こんな音になります。
マイナーフラットファイブは緊張感のある響きになっています。
6.4和音
①マイナーセブンス
今まで説明してきた「メジャーコード」「マイナーコード」「sus4」「sus2」に、短7度の音を加えたものを「マイナーセブンス」と言います。
「マイナーセブンス」はよく使われることもあって単に「セブンス」と言ったら「マイナーセブンス」の事を指します。
【構成音】
例えば「Cメジャー」に「マイナーセブンス」を加えた場合、以下のような構成音になります。
マイナーセブンスの音は、ルートから10半音=短7度の距離があります。
この構成音の決まりを満たすコードが、マイナーセブンスと呼ばれます。
【表記】
「メジャーコード」「マイナーコード」「aug」にマイナーセブンスの音が付与される場合には、単に「7」が追加されて
C7
Cm7
Caug7
というようになります。
「sus4」「sus2」にマイナーセブンスの音が付与される場合には、「7」を先につけて、そのあとに「sus4」「sus2」という表記を続けます。
C7sus2
C7sus4
※スラッシュを使って「Csus2/7」「Csus4/7」と表記される場合もあります。
さらにフラットファイブにセブンスの音が付与される場合には「7」が先に書かれて、そのあとに「-5」という表記を続けます。
C7-5
Cm7-5
C7sus2-5
C7sus4-5
【サウンド】
例えば「C7」は、こんな音になります。
セブンスの音を加えると「C」よりも複雑な深みのある響きになります。
②メジャーセブンス
今まで説明してきた「メジャーコード」「マイナーコード」「sus4」「sus2」に、長7度の音を加えたものを「メジャーセブンス」と言います。
【構成音】
例えば「Cメジャー」に「メジャーセブンス」を加えた場合、以下のような構成音になります。
メジャーセブンスの音は、ルートから11半音=長7度の距離があります。
この構成音の決まりを満たすコードが、メジャーセブンスと呼ばれます。
【表記】
「メジャーコード」「マイナーコード」「aug」にメジャーセブンスの音が付与されたコードの表記方法は
「△7」を足すパターン
「M7」を足すパターン
「maj7」を足すパタンの3種類があります。
例えば、以下のようになります。
C△7
Cm△7
Caug△7
CM7
CmM7
CaugM7
Cmaj7
Cmmaj7
Caugmaj7
「sus4」「sus2」にマイナーセブンスの音が付与される場合には、「△7」や「M7」「maj7」を先につけて、そのあとに「sus4」「sus2」という表記を続けます。
C△7sus2
CM7sus4
Cmaj7sus4
※スラッシュを使って「Csus2/j7」「Csus4/j7」と表記される場合もあります。
さらにフラットファイブにセブンスの音が付与される場合には、「△7」や「M7」「maj7」が先に書かれて、そのあとに「-5」という表記を続けます。
C△7-5
CmM7-5
Cmaj7sus2-5
C△7sus4-5
【サウンド】
例えば「C△7」は、こんな音になります。
メジャーセブンスの音を加えると、少し不協和な都会的な響きになります。
③ディミニッシュセブンス
次の音との音程が、全て短3度になっている「ディミニッシュセブンス」という特殊なコードもあります。
【構成音】
例えば、ルートを「C」とするCディミニッシュセブンスは、以下のような構成音になります。
※「♭♭」はダブルフラットと言って、半音2つ分音を低くします。
※ディミニッシュの7度の音は「減7度=9半音」となります。「短7度=10半音」ではないので、注意してください。
この条件を満たすコードが「dim7」となります。
【表記】
dim7は、ルート音の右隣りに「dim7」をつけて、
Cdim7
と表記されます。
※「Cdim7」を、7を付けずに「Cdim」と表記されている場合もあります。
【サウンド】
例えば「Cdim7」は、このような音になります。
ディミニッシュセブンスは緊張感の高い響きになっています。
④セブンスの表記のまとめ
ここまで説明してきた3和音、4和音を「3度の音」「5度の音」「7度の音」のバリエーションで整理すると以下のようになります。
7.その他の4和音
その他の4和音として、長6度の音を足す「シックス」、長9度の音を足す「add9」などがあります。
①シックスス
メジャーコードや、マイナーコードに長6度の音を足したものを「シックスス」と言います。
【構成音】
例えば「C」に「シックスス」が足された場合、以下のような構成音になります。
シックススの音のルートからの距離は、9半音=長6度になります。
【表記】
シックススは、メジャーコードや、マイナーコードに「6」が付与されて、
C6
Cm6
などと表記されます。
【サウンド】
例えば「C6」は、こんな音になります。
②アドナインス
メジャーコード、マイナーコードに、長9度の音が足されるとアドナインスというコードになります。
【構成音】
例えば、Cアドナインスは、以下のような構成音になります。
ルートからアドナインスまでの距離は、14半音=長9度になります。
【表記】
アドナインスは、ルート音の右隣りに「add9」をつけて、以下のように表されます。
Cadd9
Cmadd9
※「C/9」と表記される場合もあります。
【サウンド】
例えば「C add9」は、こんな音になります。
アドナインスは、メジャーコードにきらびやかな響きを加えてくれます。
(補足)「C9」について
「C9」と表記された場合は、マイナーセブンスの音も鳴っているという意味になり、以下の構成音になります。
※5和音以上のコードは、別途解説する予定です。
8.転回形とベース音
①転回形
コード表記は、構成音がどのような順番で、いくつ重ねられているかを区別しません。
例えば「C」なら以下のいずもれ「C」と表記されます。
下から「ミ」「ソ」「ド」や、「ソ」「ド」「ミ」という風に、最低音がルート音でない重ね方を「転回形」と言います。
②ベース音の追記
ベース音がルート音でない場合には、コード表記の後にベース音が続けて表記されます。
コード構成音にないベース音が追加されるケースと、前述の転回系のケースがあります。
【コード構成音にないベース音が追加されるケース】
例えば「C」に、ベース音として「D」を追加した場合
コード表記の後に「/D」もしくは「on D」をつけて、
C / D
C on D
と表記されます。
【転回形のケース】
例えば「C」を「E(ミ)」を最低音として、鳴らした場合
コード表記の後に「/E」もしくは「on E」をつけて、
C / E
C on E
と表記されます。
9.まとめ
今回はよく使われるコードの「コードネーム」の命名規約についてのお話でした。
ここで解説された「命名規約」の知識で、ほとんどの「歌モノ」の楽譜に書かれているコードは、どの音が鳴っているか解るようになっているはずです。
「コードネーム」を見てその構成音が再現できるようになれば、膨大に存在している先人達が残してくれた「コード進行」のノウハウを受け継ぐことができるようになります。
すぐに覚えるのは難しいので、既存のコード進行に触れるたびに、何度もこのページに戻ってきて少しずつ覚えていきましょう。
次回は「コード進行」にどうやって「メロディー」をあてはめたら良いか、その方法論について解説していきます。