1.サビの特徴

サビはキャッチーな印象に残る「メロディー」がのってきます。
J-POPの「サビ」では、長い音符を用いた単純なメロディーや、大きな跳躍を使ったメロディー、力強い連打のメロディー、もしくはそれらの組み合わせが用いられて、ボーカルが力いっぱい歌えるような工夫がされています。
また、音域もボーカルの最高音を意識して、サビの一番、盛り上がる時にその最高音が出てくるように調整されている「サビ」が多いようです。
それらを意識して「コード進行」および「メロディー」を作っていくと、「サビ」らしい「サビ」が作れると思います。

2.サビの作り方

【STEP1】最初のコード進行を選ぶ

今回も「Aメロ編」「Bメロ編」と同様に、

>「コード進行ランキング(J-POP調査結果のまとめ)」

の中から「サビ」にマッチする「コード進行」を選んでいきましょう。
今回は、この中から「サビ」の星の数が5つの

【1位】J-POP進行
F ⇒ G ⇒ Em ⇒ Am

を使うことにします。
このコード進行は、J-POPでは多用されている「コード進行」で、いかにも「サビ」という感じの雰囲気が出てくると思います。

【STEP2】リズムパターンを選ぶ

リズムパターンは、Bメロとの対比を意識していきます。
Bメロが1小節に一つのコードを割り当てていたので、1小節に2つのコードを割り当てていくことにします。
さらに3拍目でコードを切り替えるのではなく、16分音符早めて2拍目の4裏でコードを切り替えるようにします。
こうすることで、緊迫感のあるリズムパターンになり、「Bメロ」から場面転換した。という感覚をリスナーに与えることができると思います。
最初の2小節は、こんな感じになります。

【STEP3】コードの構成音から主に用いる音を選ぶ

選んだ「コード進行」と「サビ」の発音域を意識して、主要音を選んでいきます。
男声ボーカル、女声ボーカルのそれぞれの発音域は、「定番のコード進行にメロディーをのせる(Aメロ編)」を参照してください。
ここでは、以下のように主要音を決めていきます。

FGEmAm主要音

コード進行に主要音を入れたのがこちらです。

【STEP4】主要音をつないでメロディーを作る

【STEP3】で作った主要音をよく聞いて、思いつくままに「メロディー」を入れていきます。
何も思いつかない人は、
「同音連打のメロディー」
「刺繍音のメロディー」
「順次進行のメロディー」
「跳躍進行のメロディー」

で解説した方法をもう一度おさらいして、メロディーをひねり出してください。
ここでは、以下のようなメロディーを入れてみました。

このメロディーは、2小節目の「Em」の主要音「E(ミ)」を、一拍目で発音せず最初にコード外の音「D(レ)」を発音したあと、遅れて「E(ミ)」にたどり着いています。

メロディーがコードチェンジに遅れる

このように「コード構成音」にたどり着くタイミングがコード変化のタイミングから遅れたり、逆に「定番のコード進行にメロディーをのせる(Aメロ編)」でやったように先取りするのもOKです。
むしろ、コード変化のタイミングとずらした方が、おしゃれな「メロディー」になります

【STEP5】次のコード進行を選ぶ

2小節だけだと短いので、2小節のばしていきます。

>「コード進行ランキング(J-POP調査結果のまとめ)」

の中から「サビ」にマッチする「コード進行」を選びます。
ここでは、

【10位】マイナードミナントモーション拝借進行
F⇒E7⇒Am⇒C

を使うことにします。
この「コード進行」の特徴は、なんといっても「E7」で、Cメジャースケールにない「G#(ソ♯)」を含んでいることです。

E7の構成音

スケールにない音を含むと、サウンドは緊張感を帯びます

サビや、サビ前などで、スケールにない音を入れて、緊張感を出す手法はJ-POPではとても多く行われていて、常套手段になっています。
スケールにない音をいれていくことで、「サビ」っぽいサウンドになってきます。
次の2小節のコード進行は、こんな感じになります。

【STEP6】メロディーの主要音を選ぶ

選んだ「コード進行」と「サビ」の発音域を意識して、主要音を選んでいきます。
ここでコード進行の「E7」に含まれるCメジャースケールにない「G#(ソ♯)」もメロディー音として取り入れることで、さらに緊張感を出していくことができると思います。
ここでは、以下のように主要音を決めていきます。

F⇒E7⇒Amin⇒Cの主要音

この主要音を、コード進行とともに鳴らしたのがこちらです。

【STEP7】主要音をつないでいく

ここまで作成した「コード進行」と主要音をよく聞いて、思いつくままにメロディーを作っていきます。
ここでは、このようなメロディーを作ってみました。

2小節目のメジャースケールにない「V#(ソ#)」の音は、伴奏のコードチェンジのタイミングに合わせて、3拍目よりも16分音符分早く発音しています。
この事によりサウンドに溶け込みつつ、アクセントのあるメロディーになったのではないでしょうか?

【STEP8】1~2小節のモチーフを使って5~6小節目を作る。

1~2小節目のモチーフを使って、5~6小節目を作っていきます。
単純な繰り返しではなく、少し変化させて「メロディー」の展開感を出していきます。
また、サビの後半戦なので、ボーカルの最高音の「A(ラ)」も取り入れて、ボーカルが力いっぱい歌えるようにしていきます。

モチーフの音高をかえる

5~6小節目はこんな感じになりました。

【STEP9】最後の2小節のコード進行を選択する。

最後の2小節を作っていきます。3~4小節目と同じ

F⇒E7⇒Am⇒C

を使う選択肢もありますが、これだと、サビの終わりとして、少し「終止感」が足りないと思います。
明確な「終止感」を出すためには、「G」⇒「C」の進行で終わるのが良いと思います。
「G」⇒「C」の進行で終わるためには、ストレートに最後の2つのコード進行が「G」⇒「C」となっている「コード進行」を採用するか、もしくは最後のコードが「G」となっている「コード進行」を選んで、そのあと、1小節追加して「C」とすると良いと思います。
そのどちらかに該当する「コード進行」を

>「コード進行ランキング(J-POP調査結果のまとめ)」

の中から選んでいきます。
ここでは、Bメロでも使った

【9位】ぐいぐい盛り上げ進行
Dm ⇒ Em ⇒ F ⇒ G

を選択して、ぐいぐい盛り上げて、盛り上がりきったところで「C」に進行して、サビが終わったという「終止感」を出していく作戦にします。

いままで作ったサビに
Dm ⇒ Em ⇒ F ⇒ G
を追加して、そのコードの中から主要音も入れたものがこちらです。

「Aメロ」の解説の中で、主要音がコードのルートばかりになると、単純なイメージになってしまうので避けた方が良い。
と解説していますが、ここでは「メロディー」の主要音は「D(レ)」⇒「E(ミ)」⇒「F(ファ)」⇒「G(ソ)」なので、避けた方が良いと解説したコードのルート音の連続になっています。
ここは、サビの最後の最後の盛り上がり部分なので、単純になってしまうというデメリットよりもコードのルート音とともに「メロディー」が上昇していく力強さが出るというメリットを優先しました。

【STEP10】コード進行の主要音をつないでメロディーを作る

【STEP9】までで作ったサウンドを良く聞いて、思いつくまま「メロディー」を入れていきます。
ここでは、こんなメロディーを作ってみました。

最後の4小節目は、1拍目で「Ⅰ(ド)」としてしまうと、単純さが出てしまうので、一つ上の「Ⅱ(レ)」を発音した後、もったいぶってから3拍目で「Ⅰ(ド)」に移動するようにしています。
この一旦、コード構成音から2度離れた音を発音してから、本来のコード構成音に順次進行する場合の「2度離れた音」を「倚音」と言います

倚音

「倚音」を使うと、メロディアスなイメージになります。

【STEP11】エンディングの伴奏の微調整

【STEP10】で倚音を使って、メロディーが「Ⅰ(ド)」に移動するタイミングを遅らせたことで、伴奏との不揃い感がでてきてしまったので、エンディングの伴奏を少し伸ばします。

いかがでしょうか?
まだ色々と改善できるポイントはあるかもしれませんが、定番のコード進行に「メロディー」をのせる流れはイメージして頂けたと思いますので、これで完成とします。

3.まとめ

前回、前々回作ってきた「Aメロ」「Bメロ」および今回作った「サビ」を通して聴いてみましょう。

いかがでしょうか。
J-POPでよく使われている「コード進行」を使ったので、それらしい曲になったのではないでしょうか?
ただ、逆に「Aメロ」「Bメロ」「サビ」を通してよく使われている「コード進行」ばかりで、さらにその「コード進行」に逆らわない「メロディー」を入れていったので、オリジナリティーの薄い曲に聴こえるかもしれません。

リスナーにおっと思われるようなオリジナリティーを出していくには、この基本系をさらに崩していく必要があると思います。

土台となる「コード進行」「メロディー」を作ることができるようになると、そこから崩していくこともできるようになってきます
まずは基本的な「コード進行」「メロディー」を作って、複数曲、完成させることを目指しましょう。
曲を作っていく過程で新しいインスピレーションが生まれてくることもあります。
「Meloko」を使えば「コード進行」と「メロディー」の組み合わせを次々に試していくことができますので、iPhoneユーザには特におすすめです。

次回から「コード進行」「メロディー」の作り方について、もっと深く解説していく予定です。